★静岡物語5月号
静岡物語は、平成10年1月に第一出版から創刊された静岡の情報誌です。
するがクリエイティブの連載があって、毎月いろいろな業種の職人さんを紹介していました。 この5月号は、私黒田雅年を特集してくれました。
また、静岡らしく、伝統工芸のほかにお茶の話、おいしいお店などが紹介されていて値段も480円とお手頃でした。
(このページは、第一出版様のご厚意により転載させていただきました。ありがとうございます)

するがクリエイティブによる生活提案5
○竹千筋細工 
黒田雅年さん

繊細に組まれた伝統的手法の花器
「南都」


伝統的な竹千筋細工の手法で丁寧に作られた花器。細い竹ひごを曲げ、組んで、さらに南京編みと呼ばれる星型の模様をはめ込んだ.手間のかかった作品だ。これは数年前、黒田さんが初めて一人で作り上げた大作でもある。
 かなり大ぶりで、黒っぽい色で塗ってあるにもかかわらず透け感の美しさが軽やかな印象を与える。

やるからには、自分を表現したい。

でも、それだけで終わってはいけないとも思います。


生活の中で「当たり前」に存在するのは
意外に大変なこと。
伝統と新しい感覚を融台させ、
インテリアとしての明かりを制作する。


繊細で、洗練された美しさの竹千筋細工。竹千筋(竹ひご)を駆使した精巧な細工は、国の伝統的工芸品の指定を受けている。竹を細く割いたものを小さな穴に通し、細くしなやかな竹ひごを作るところから、それを熱したコテで曲げ、やはり熱で曲げた縁に挿して組み立てるまで、簡単な道具だけを使う完全な手仕事だ。
「同じ竹細工でも、九州のものは編んでいくんですが、静岡のはまず最初に設計して形を決めてしまうんですね。縁を作ったら、間隔と角度を考えて穴を開け、そこに熱を加えて曲げた竹ひごを挿して組み立てます」
黒田雅年さんの最近の作品は、竹ひごの美しさを追求しつつ、焼き物と.組み合わせたり、竹ひこの上に藤を巻いたり和紙を張ったりとかなり個性的。時には、竹千筋らしくないと評されることもあるという。
「竹千筋細工は家業だったんですが、最初は継ぐ気はなくて、ほかの仕事をしていました。若い頃って外に出たいじゃないですか。それに、以前は電気のかさの部分だけを作ったりと、自分を表現するというより下請け的な感じだったから、魅力を感じなかったんですよ。それが国の伝統的工芸品の指定を受けた十ニ、三年前から、工芸っぽいものを作り始めたんですね。やってみようかと思ったのは、やっぱりその頃から。実際始めて、九年ほどになります」
自分を表現する作品として、黒田さんが取り組んでいるのは円筒形の照明器具。

「ニ年ほど前から照明器具ばかり作っていますね。形も大きさもほぼ同じなんですが、竹ひごの太さや間隔を変えるだけでもずいぶん印象は違います。藤を巻いたり、和紙を張ったり、土台に焼き物を使ってみたりと、形がシンプルなだけに工夫が生きて、作っていても常に新鮮です」。
伝統技術に新しい感覚を取り入れた作品は、他業種の人やデザイナーからの意見も参考にする。美術品的な美しさを持ちながら、あくまでも実用品であるというバランスに、黒田さんのこだわりが感じられる。
「洋画を観ていたら、日本の提灯風の照明が出てきたんですよ。洋風な生活にも調和していて、自分の作ったのも(映画に)出てきたらいいなあと、その時思いました。今はインターネットを使って海外にもアピールしています。アメリカの方からメールをもらったこともありますよ」。
「どこの家庭にもある電気のかさのような当たり前のものというのは、実は結構大変なこと」
と言う黒田さん。日本でも外国でも喜ばれる、ホッとくつろげる明かりづくり。それは黒田さん自らが選んだテーマであり、自分を表現する一つの方法である。

竹千筋の美しさを「隠してみせる」
新感覚の照明

「あさぎ」(写真右)
12,000円
高さ36.5センチ、直径17.5センチ
「和陶60」と同様に竹ひごの上に和紙を張り、破り目のおもしろさを生かした。浅黄色をアクセントとして使うことで、新しい感覚が強調され、よりデザイン的になっている。竹と和紙という日本的な素材を使いながら、洋風の部屋のインテリアとしても調和する作品。

「和陶60」(写真左)
25,000円
高さ60センチ、直径18センチ
沼津の竹植物園の方に「焼き物と組み合わせてみたら」と言われたのをヒントに制作したこの作品は、「土と竹」という素朴な力強さを出すために、通常の三倍の太さの竹ひごを使っている。普通は内側に張って竹ひごの美しさを引き立たせる和紙を、あえて外に張ってあるのも斬新。明かりをつけたときの竹ひごの美しさが印象的だ。

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